2023/04/30 01:14

最近、お店でフルカリ刺繍のアイテムを扱うことが増えました。もともと刺繍好きな店主のこだわりで、日本にあまり入ってきていないフルカリ刺繍のアイテムをご紹介したいという思いから、デュパタ(大きめの布)やポーチなどを販売しています。

そもそもフルカリって何?と思う方もいらっしゃると思うので、調べて記事にまとめてみました。

 


 


■フルカリの歴史

 

フルカリ(Phulkari,cali)は、インドのパンジャブ地方に伝わる伝統的な刺繍です。フルカリ刺繍の起源にはいくつかの説が存在しています。パンジャブ州だけで生き残ったとする説や、イランから伝播したとする説などがあります。また、「ジャット族」という先住民族がインドに移住する際に、この刺繍を持ち込んだという説も存在します。しかし「Phulcari」という単語は、18世紀のパンジャブ語文献に最も古い記載があることがわかっています。

 

この技術や模様は、文書化されることなく口伝されてきました。祖母から母、母から娘へ、という方法です。シーク教の伝統と関連していたものの、ヒンドゥー教徒やイスラム教徒とも共有されていました。起源はワリス・シャーの著名な恋愛物語「Heer & Ranjha(愛の物語)」にまでさかのぼると言われています。これはパンジャブ地方の民話で、インド版「ロミオとジュリエット」のような物語です。現在の形態が確立し、人気が高まったのは15世紀に遡ります。

 

パンジャブ地方では、女の子が生まれることは非常に縁起が良いこととされ、女の子が誕生すると母親や祖母がフルカリの刺繍を始めます。フルカリは結婚の際に贈られるものであり、女の子の両親は、彼女たちの地位に応じて複数のフルカリを提供するという伝統が今も続いています。

 

■「フルカリ」という名前の意味

 

パンジャブ地方の女性たちにとって、フルカリは自己表現のひとつの方法でした。「Phul」は「花」を、「Kari」は「仕事」を意味し、「Phulkari」は「花の仕事」または「花の刺繍」という意味になります。

 


 


■フルカリ刺繍の作り方

 

デザインは花柄を中心に、様々なモチーフや幾何学模様が含まれており、全体的に明るく鮮やかで、インドの人々の生活に彩りを与えています。

フルかりの製法では、「ダーニングステッチ」という技法が最も一般的です。制作過程では、まずモチーフを彫ったブロックで布にデザインを転写し、刺繍する人が縫う方向を決められるようにします。粗い綿布である「カダー」の裏側に、色鮮やかな絹糸を使ってダーニングステッチを施すことで完成します。

縫い目が小さければ小さいほど、その作品は上質なものになります。珍しいデザインを作るため、あるいはカダーに縁取りをするために、ヘリンボーンステッチ、ランニングステッチ、ホルベインステッチ、ボタンホールステッチといった、他の種類のステッチも使われることがあります。

 

■布や刺繍の色の意味

 

フルカリにおける色の使い方は非常に重要な部分です。伝統的には、4色のカダー生地だけが使われ、それぞれの色に意味がありました。白い布は老女や未亡人に、赤は若い娘や花嫁に、青と黒は日常使いに使われました。このほか、フルカリ刺繍の赤は非常にメジャーで、若さと興奮を表しています。オレンジ色はエネルギーを、白色は純潔を象徴しています。緑色は豊穣を、青色は静寂を象徴しています。

 


■選ばれるモチーフの意味

女性たちが刺繍に選ぶモチーフは、彼女たちの想像力や日常生活から得るインスピレーションに基づいています。

実際のところ、モチーフは何でもよいのです。身の回り、環境、自然、庭、あるいはただ母と娘が話している姿など、あらゆるものから選ばれています。

フルカリ刺繍でよく使われるモチーフには、ベラン(麺棒)、カクリ(キュウリ)、チャンドラマ(月)などがあります。その他、動物、花、木、鳥など、身の回りのものをモチーフにした刺繍もあります。ゴーヤ、カリフラワー、コリアンダー、唐辛子などの野菜もモチーフになります。

また、パンジャブ州で育つ小麦や大麦の茎をデザインに取り入れることも一般的で美しいとされ、動物の中では、孔雀がよくデザインに使われています。

 


■フルカリの種類・用途

 

実はいろんな種類があるフルカリですが、一部をご紹介します。

Darshan Dwar:神に感謝の意を示す供物として作られ、願いが叶った後にグルドワラ(シーク教のお寺)に寄贈されます。Darshan Dwarは「神に会うための門」と訳されています。

バワン・バグ:「52」を意味するバワンは、このプルカリに52種類の模様が描かれることから名付けられました。非常に希少です。

Vari-da-bagh:花嫁が新居に入る際に、両親から贈られるものです。オレンジがかった赤みのあるカダー生地で作られ、黄金色かオレンジ色のパットが1つだけ使われています。主な模様は、3つか4つの小さな同心円状の菱形が大きくなっていくグループです。

チョープ:花嫁の母方の祖母が、花嫁が生まれたときに作ります。ホルベインステッチが使われており、両面に同じデザインが施されています。結婚式当日の入浴後の花嫁を包む(!)ために使うもので、単色で刺繍されています。

 




フルカリはパンジャブ地方で、結婚式やお祭り、祝賀会、行事などで用いられ、女性たちがその創造力を存分に発揮し、日常生活に彩りを与える「家庭的な芸術」として親しまれています。その美しさと独特の技法によって世界中で愛され、今もなおインドの文化遺産として作られ続けています。

 Cordeliaでは、現代の人々向けにアレンジしたフルカリ刺繍のアイテムを色々とご紹介しています。お店をご覧になって、気に入ったアイテムがあれば幸いです。

 

 



 

 

参考サイトの一部

https://www.caleidoscope.in/art-culture/phulkari-embroidery-punjab